コーチが充分な状態でないと・・・

以前のブログで、コーチができるだけ“『リソースフル』な状態を創り出しておくこと”というお話をしました(ブログ:クライアントの世界への『介入』)。

『リソースフル』とは良い状態、充分な状態なことですね。

では、コーチが充分な状態ではないとしたらどうなるんでしょうか・・・。

恐ろしいことに、無意識のうちにクライアントからエネルギーを奪おうとしてしまいます。あるいは、自分の中の満たされない部分をクライアントからの賞賛や承認で満たそうとします。「すごいですね~ぇ!」と言われようとする振る舞いをしちゃうんですね。

クライアントにとって、これほど不幸なことはありません。

ですので、普段から自分自身の存在を肯定的に受け止め(自己肯定感)、自分のことを認めてあげて(自己承認)、精神的にも肉体的にもリソースフルでいることです。これって、部下に関わる上司、あるいはさまざまな人間関係においても同じことが言えると思います。

コーチとしての『あり方』は、どのようなスキルよりも最優先されるもっとも大切なものなんですね。

研修やっても・・・

『研修は必要だと思うんだけど、受けさせてもなかなか変わってくれないんだよね・・・』

人材育成のご担当者によく聞かれるご意見ですね。

実際、私も企業内で人材育成企画をしていたときは、まさに、これっ!

“いかに行動変容させるか”

が永遠のテーマでした。

研修会場で、受講者の方の意識は確実に変わっているんです。なので上の文章を正確に言い直すと「変わったんだけど、元に戻っちゃう」ということなんです。なぜなんでしょうね。

結構多いのが、“(研修を終えて)職場に戻ってみると周りはまったく変わっていない”という状況です。せっかく研修で気づきを得てアクション・プランまで考えたのに、今までと少し違う言動や振る舞いを仲間の前でするのはなんとなく照れくさい部分もありますよね。かわいそうなケースだと、『どうしたんだ、お前?』なんて上司・先輩に言われてしまって完全にノックダウンです(笑)。

あるいは、職場の理解を得られたとしても、本人の意識そのものが長続きしないこともよくありますね。

本格的なコンサルティングまではいかなくても、研修のお声がけをいただくお客様には、研修で確実に変化した受講者ご本人の意識が長続きするようなアイデア、あるいは上司や同僚を巻き込んで行動変容をサポートできるような職場環境作りのご提案をさせていただいています。

相手の可能性を本人以上に強く信じる

前回は、「介入」することについてお伝えしました。今日はそれにも関連のある話をしてみたいと思います。

さて、みなさんが部下やクライアントにコーチング的な関わりをするときに、相手の前進や成長を、本人以上に強く信じることができるでしょうか。

『人には無限の可能性がある。』

本物のコーチは、部下やクライアント本人よりもはるかに強く(!)、相手の可能性を信じ続けます。その不動の信念(覚悟と言ってもいいでしょうね)があれば、強めの介入も可能になり、結果として相手を“健全に”エッジに立たせることができるので、アイデアやアクションを引き出すことにつながっていくんですね。

ですので…

「何か助言を与えなければ…」

とか、

「彼(彼女)の問題を解決してあげなければ…」

といった考え方から、解放されて自由になる必要があります。

これができないと、自分自身の体験からくる“あなたのアイデア”を安易にアドバイスしてしまいます(アドバイスがよくないと言っているわけではないですからね)。結果として、クライアントや部下の意識は一向にシフトしないんですね。

クライアントの世界への『介入』

コーチにとって、コーチングとは、「相手(クライアント)の世界に『介入』すること」とも言えます。これをすることなしに、一見、気の利いた質問をいくら投げかけたとしても、成果は一向にあがりません。表面的なやりとりに終始してしまうんですね。

例えば、コーチング・セッションの冒頭にクライアント自身が「これがテーマです」と話してきたことと、実際のテーマが違っていた…あるいは本質的なテーマが隠されていた…などということは、日常茶飯事なんです。

だから、コーチは『本音を語れ』と相手の無意識に要求するわけですね。そのためには「本音を話してもいい」、言い換えると、「このコーチになら介入されても構わない」と無意識レベルで感じられるような存在でいる必要があります。

それには、コーチができるだけ『リソースフル』な状態を創り出しておくことです。精神的にも肉体的にもコーチング・セッションを行うのにふさわしい状態、つまり“良い状態”でいるということが大切ですね。

がんばれっ、ライン課長!

これだけ変化の激しい時代です。予想しきれなかったことも頻繁に起きるでしょうし、ひとりひとりの社員の価値観だって多様化して当たり前ですよね。

そんな中、成果を出し続けるべく頑張っているライン課長の方は、特に大変だと思います。

最近の傾向として、年上の部下への対応、モチベーションがないわけじゃないんだけど、小さくまとまっているように見える中堅社員、(上司から見ると)考えていることがよくわからない若手社員(単に上司が、価値観を受け入れていないだけのケースも多いんですけど…)、などで悩んでいる方が多いように感じています。

でも、そういうマネージャーさんとセッションをすると、みなさんうまくいくためのリソースはすでに持っているんですよね。気づいていないか、あるいは可能性に自らフタをしているだけなんです。

もともと能力がある方ばかりなので、コーチが強めの介入を続けると、どんどん気づきを得て、後半は自分自身で意識がシフトしていくような展開もよくあります。

彼、彼女らが、セッションの会場を出るときの変化…表情や姿勢、声の力強さなどが確認できると、こちらもエネルギーをもらいますし“コーチとして貢献できたんだな…”と豊かな気分にもなります。

“完了”することの大切さ

ものごとを“完了”することって、とっても大事なんです。

では、完了するってどういうことでしょう???

自分の体験やできごとにきちんと『意味付け』ができて、健全に未来に向かえることなんだ、と私は思っています。

経験上、過去に“未完了”を抱えたままで、そこに向き合っていないクライアントの方は、比較的表面的で『頭で考えた』コメントが多くなる傾向があります・・・。

 プロコーチとして、それを適切にキャッチできるか?・・・が、セッションの成果を大きく左右するわけなんですね。

ビジョン・コーチングの勧め

人は、未来のことを考えるときに、どうしても過去に体験してきたことの延長線上で考えようとします。

この反応って普通ですし、とてもよく分かります。

そして、その体験の積み重ねが、その人の“パターン”をつくり出しているんです。

だから、ある程度未来も想像ができちゃうんですね。簡単に想像できる未来を描いて、ささやかな安心を手にするんです。

でもね…そこにワクワクするような未来はないんですね。なので当然、意識や振る舞いがシフトすることもほとんどない。

一度きりの人生なんですから、高いところにビジョンを掲げたいものですね。そして、そこに向かうストーリーを楽しみながら考え抜くのって素敵なことです。

一旦ビジョンができると、意識や行動も驚くほど変わります。しかも自然に。それに、意思決定する場面でもブレなくなるんですね。

なぜかって、答えは簡単!

できごとが自分のビジョンに沿っているかどうかを考えるだけで済むからです。これって、とても楽なことですよ~ぉ(笑)

ビジョン・コーチングは、あなたの前進を強力にバックアップします。

『人を育てる』こと

『人を育てる』のは、時間がかかりますよね。

そして、ある日になったら突然・・・

“成長したっ!”

ってものでもありません。

だからといって、人への投資をやめてしまうとあっという間に企業の体力は落ちていきます。

やはり、トップの方針・理解があってこその人材育成なんですね。もっといえば、“覚悟”みたいなものかもしれません。

市況が厳しくても人への投資を継続する企業は、やはり強いですよね。社員の表情も活き活きしているように感じます。

少しでも、企業や組織あるいは個人の肯定的な変化に貢献できれば、と考える今日この頃です。